金型設計する時に悩みますよね?
- どこにゲートを設けるのがよいのか?
- ツメや溝がどのくらい変形するのか?
- ガス抜きは、どこに設けるのが一番良いのか?
ずばり解決してくれるわけではありませんが、かなり参考になります。樹脂流動解析。
かなりお高いですが・・・
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ソフトは昔からあるが、大企業でしか使われていないような
樹脂流動解析の研究ははるか昔から行われていて、市販ソフトもかなり前からありますよね。
ですけど、僕のいる会社の取引先の成形屋さんや金型屋さんには持っておられるところはありません。
有名なソフトを買うとなると、はっきり言って費用は高いです。毎年の保守費用もバカになりません。
特に今の不景気下では、零細企業の売り上げの中からでは難しいですね。
金型の手直しをなくしたい・・・
樹脂がどれくらい縮むのかがわからない
全体的な収縮は、同じような形状の成形品ならば経験値である程度予測できます。
しかし初めての形状の場合は、特に反りや部分的な変形などはわかり難いですよね。
修正を見込むにしても、変形の傾向だけでも掴みたい
コアピンを太めに作っておいて、外れた分だけ細く削るという程度ならいいんですが、時には丸ごと作り替えた方が早よねという時がありますね。
フック状の形状が広がるのか、狭くなるのかでも分かれば非常に助かります。
シミュレーションでどこまで分かるのか?
ここ10年ほど、片手間ですが流動解析にも関わってきました。
分かったこと、6点
- 思ったよりも時間がかかる
(準備も解析計算自体も・・・数十時間) - 成形不良の状態は、正確に再現しない
(正しくない状態の時は、最後まで計算せずに手前で終わる) - 一回の解析で未来が正確にわかるわけではない
(星ひとみさんの占いの方が確かかもしれない) - 条件を変えて何パターンか解析すると、着地点が見えてくる
(少なくとも10パターンくらいやらないと見えてこない) - 販売会社との保守契約は必須
(困ったときに相談できないと、そこから前へ進めない) - 会社の上司は、高い金を払ったんだから簡単に正確な予測ができると思っている
(これが一番困る)
具体的には
- 流動解析の計算をするには、CADモデルをメッシュというツブツブに分割します。
これの計算に少し時間がかかります。
また、CADモデルに小さな亀裂などの不具合部分があるとエラーで止まるので、それの修正も必要になります。
試行錯誤の繰り返しがほぼ必ず起こります。
ですので、作業に必要な時間の見込みがなかなか読めません。 - 成形が正しく行われることを目指しているので、ショートなどの不良状態は正確に再現されるようにできていません。
不良が起こると、エラーを出して計算をやめてしまいます。 - 実際の成形機と同じ設定値を入力しても、全く同じ結果にはなりません。
ただし、方向性は示してくれます。 - メッシュの分割具合が粗いと結果が大きく異なりますが、細かすぎると計算時間が膨大になったりエラーで止まってしまったりします。
細かさを変えながら何パターンか試して、ちょうど良い設定を探す手間が必要です。
最適なゲート位置を求めるのも、いくつも試してみるしかありません。
ただ、お金があれば有料オプションで最適ゲート位置を計算してくれる機能もありますので、それを使うと手間が減らせるでしょう。 - どうしてもエラーが解消できない時や該当する樹脂データが無い時などは、サポートサイトが頼りになります。
と言うか、サポートサイトが使えるように保守契約しておくのは必須です。
助言を受けないと進めることができないことが多々あります。
書籍やネットの情報ではどうしようもないです。独学は無理と考えるべきです。 - 樹脂流動解析に限りませんが、よく知らない人は夢のような道具だと思っているようです。
ドラえもんのポケットから出てきたわけじゃないんですけどねぇ。

候補としては、この3社ではないでしょうか
東レ社・3D TIMON
3D TIMON
樹脂材料屋さんなので、サポートの方も樹脂の特性自体については一番ご存知な感じがします。
標準で搭載されている樹脂や成形機のデータベースが日本製の物が多くあります。
助かりますねぇ。
パソコン用ソフトとしては見た場合、安いパソコンでも使えるようにメモリをあまり使わない設定になっています。
そのせいか、計算速度はあまり速くは無いです。
また、操作が少しめんどくさく気が利かないなと思うことがあります。
言わずと知れた我が日本の会社です。あと数年で創業から100年。
自動車用エアバッグや人工透析用フィルタ、電子ペーパー用フィルムも手掛けられています。
ユニクロさんとも提携されていたような。

AUTODESK社・Moldflow
Moldflow
パソコン用ソフトとしては、この3つの中で一番洗練されています。
初心者でも取っ付き易いです。
1980年代からAUTOCADで知られるアメリカの会社。産業用コンピュータソフトの総合企業の様相を呈しています。
AUTOCADやMoldflowの名前をを聞いたことがない人は、少ないですよね。
また、パソコンの性能を最大限に引き出してくれます。
計算中はほとんどメモリ内で処理しているようで、HDDやSSDにアクセスしていません。
そのおかげか、計算速度が速いです。
CPUのコア数が多い方が速いです。
10コアでも100%使ってくれます。

CoreTech System社・Moldex3D
Moldex3D
正確な解析計算へのこだわりに加え、PCの計算速度を早くする工夫にも熱心です。
計算を4分割で行うので、マルチコアCPUの力を発揮させてくれます。
(実際に試せていないので、Moldflowより速いかどうかはわかりません。)
ただ、操作手順は初心者にとっては、少々わかり難いと思います。
台湾の産学連携のベンチャーから始まった、Windows3.1の時代からのソフトですね。
樹脂流動解析専門の会社ではないでしょうか。

フリーソフトは無いと思います
構造解析や流体解析、熱解析はフリーの物がありますが、樹脂流動解析は見たことがありません。
10年以上探していても見つからないので、無いと思います。
OpenFOAMというソフトで、やってできないことはないということは聞いたことがあるのですが、僕にはできる気がしません。
商品である樹脂の粘度データを、どのように準備するかという問題もあるますし。

”逆反り”機能に注目してみる
収縮や反り変形の逆を作るのが金型形状
僕が個人的に期待しているのが、逆反り機能です。
樹脂は縮んだり変形したりするわけですが、製品形状をその逆の方向へ変形させたものです。
その形状で金型を作れば、樹脂が変形した後で製品図面の形状に成形品が出来上がるじゃないかというものです。
現実はそんなに甘くはないですが、かなり近いものができると思うのです。
その逆反り形状に経験値を少し加えれば、一発合格も不可能ではないと考えています。
この点で一歩リードしているのが、Moldflow
逆反り機能の有効活用を最優先で考えるとしたら、有利なのがMoldflowです。
その他2社は逆反り形状をSTLデータでエクスポートするのに対して、MoldflowはSTEPデータを出すことができます。
※解析前のインポートがSTEPの場合のみです。STLをインポートした場合はできません。
STEPデータを金型設計ファイルに組み込んで、若干手直しをすれば出来上がりです。
品質と同時に、設計時間の短縮も狙えるのではないでしょうか。
結論:金型屋としてはMoldflowかな
3D TIMONさんや、Moldex3Dさんの成形機の中を正確に計算しようとする姿勢は非常に重要だと思います。
成形機のシリンダ内部やホットランナーの樹脂の動きを計算されているのは頭が下がります。
非常に惜しいのですが、やはり逆反り形状を金型形状に反映できるMoldflowさんに一筋の光明を見ました。今の時点では・・・ですが。
3D TIMONさんや、Moldex3Dさんにも期待しています。是非とも、STEPで出力できる機能を付けてください。
ここでMoldflowさんに要望を1点。
バージョンが2021になって、HELPがオンラインで確認するタイプになってしまいました。
さくさく表示されないんですよね。
時間がかかります。
会社のネット回線が遅いせいもあると思いますが、できたらインストールできるタイプのHELPも用意してもらえたら助かります。
以上、参考になればうれしいです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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