【解析】金型温度上昇でバリ発生、FreeCADでソリ解析

金型で隙間が無いのにバリが収まらない時は、プレートの反りを疑ってみましょう。
冷えている時にはぴったり隙間が無くても、温度が上がると反るのかもしれません。

特にホットランナーシステムの設置された金型では、どうしてもプレートの表側と裏側の温度に大きな差が出てしまいます。
そうすると、鉄の膨張率の差でどちらかに反ってしまいます。


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FreeCADの熱解析で、金型の反りを計算してみましょう

表裏の温度差で、プレートが反ります

反りの原理としては、非常に単純です。
温度が高い部分が大きく伸びて、温度が低い部分は少しだけ伸びる。

この差によって、こんな風にプレートが曲がります。
僅かなので、見た目ではわかりませんが。

熱膨張の図




手計算でもできないことは無いんだろうけれども

無料で使えるFreeCADで、熱に関係した解析もできます。
熱の伝わり方や、熱による膨張などですね。

電卓で手計算でもできるのでしょうけれども、知識が無いし何十回も計算する根性もないので機械頼みです。

絵で見せてくれるので、イメージし易いし上司やお客さんにも説明し易い。

プレートが反っている画像




熱解析の手順

モデルを準備する

金型の3DCADデータを使います。
図面しかない場合は、作ってください。このFreeCAD内でも作れます。
細かい部分は要らないので、おおよそ似ていればよいと思います。

解析したいプレート1枚のみを、エクスポートしてください。
STEP形式がいいと思います。

そのデータをFreeCADに読み込みます。
ワークベンチをPartにしてから、Model→CADをインポートで行ってください。

  1. CADデータを用意
  2. FreeCADを起動
  3. ワークベンチをPartにする
  4. メニューModelをクリック
  5. 出てきたメニューから、CADをインポートを選択
  6. CADデータのファイル名を選択
  7. OK
ワークベンチ一の説明の画像
CADをインポートの図



解析の条件を入力する ~プレートの材質

ワークベンチをFEMに切り替えます。



次は解析の項目を作り、そこへプレートの材質、各部の温度を指定する。

  1. 左側リストのモデル名を選択しておく
  2. アイコン群の中から黄色いAアイコンをクリック
  3. 黄色い球アイコンをクリック
  4. 材質を選ぶ 
Aマークと球マークの画像



ここで材質なのですが。
本来は実際のプレートの材質とすべきなのですが、ここはCalculix-Steelとしてください。
材質がS55Cならば、Steel-C55E(欧州規格)を選ぶべきなのですが、Thermal propertiesの欄が0なのです。
やっていただけるとわかるのですが、数値0で計算しようとするとエラー出て続行できません。

Calculix-Steelの図
Thermal Propertiesの図




解析の条件を入力する ~温度

ヒータで熱くなる所、冷却水で冷やす所、周りの空気の温度を教えてあげます。

  1. 俵に温度計のアイコンをクリックして、
    ホットランナーのマニホールドがあるフェースをクリック
    温度の数値を書き換える(※ケルビン温度とは?)
    Addをクリック→OKをクリック
  2. 俵に温度計のアイコンをクリックして、
    冷却穴の内側の面1か所をフェースをクリック
    温度の数値を書き換える
    Addをクリック(OKはクリックしない)
    冷却穴が複数ある場合は、上記を繰り返す
    全て終わったら、OKをクリック
  3. 俵だけのアイコンをクリック
    温度の数値を書き換える
    Addをクリック→OKをクリック
  4. フェースに赤い矢印が表示される
俵マークの画像


※ケルビン温度とは
日常生活で使っている摂氏℃の温度表記ではなく、絶対温度での指定になります。
摂氏温度に273℃をプラスした数字を入力してください。
(例)冷却水温40℃→40+273=313K

水温指定の図




解析の条件を入力する ~基準位置(±0の位置)を指定

ここで指定した部分が基準(数値が0)になります。
これは解析結果に影響するわけではありませんが、結果(反りの大きさ)を見るときにわかり易くするために必要です。

  1. 俵と鍵のアイコンをクリック
  2. 3Dモデルの基準にする部分を選択
    (今回は、プレート4隅の角としています)
  3. Addをクリック(OKはクリックしない)
  4. 2点目~4点目まで同じことを繰り返す
  5. 全て終わったら、OKをクリック
    赤い背の低いロードコーンのようなマークが表示される
俵と鍵のアイコンの画像
角を選択の画像
四隅を選択したの画像



メッシュを作成する

解析するには、モデルを細かいツブツブに分割します。
それを、メッシュを切ると言ったりします。

細かくすると精度はよいですが、おそろしく時間がかかりますしエラーで止まったりします。
最大サイズを10くらいにするのがよいと思います。
計算が3分程度で終わります。

  1. 左側リストのモデル名を選択しておく
  2. ルービックキューブにNマークがついたようなアイコンをクリック
  3. 最大サイズ1000になっているところを10に変更する
    数字が大きいとメッシュが粗すぎて形状が崩れますし、
    小さすぎると計算に膨大な時間がかかります。
  4. OKをクリック
Nマークの図
最大サイズの図
メッシュが切れた状態の画像




計算する

ようやく解析の計算です。お待たせしました。

  1. 左側の窓内のSolverCcxToolsをクリック
  2. Thermo mechanicalを選択
  3. その下のWrite inp fileをクリック
  4. Write completedと出ればOK 
    赤文字でエラーが出れば、メッセージの内容を見て対処する
    多くは、温度条件が指定されていない、材質ファイルの数値が不完全な場合。
  5. Run CalculiXをクリック
  6. 緑色文字で、CalculiX done without error!と出ればOK
    赤文字でエラーが出れば、メッセージの内容を見て対処する
    多くは、プレートの3Dモデルが複雑な形状になっている場合です。
    穴や掘り込みを減らすなどのモデル形状の簡略化が必要です。
  7. 閉じるをクリック
Write completedの画像
計算完了の画像




結果を見る

結果を見ましょう。

  1. 左側窓の中のCCX Resultsをクリック
  2. Displacemant Zを選択
  3. 変位にチェックを入れる
  4. 係数を1.0にする
  5. マウスポインタをプレート表面の赤っぽい所に合わせる
    ウインドウの下端に0.183797mmと座標が出る。
    →四隅よりも0.18mmほど凹んでいるということです。
CCX Resultsの画像
反りを確認しているの図

上記の例は、ホットランナーが260℃(553k)で、冷却水が40℃(313k)の設定で解析しました。
結構、反っています。

パート面に隙間ができるということですから、バリも発生しますね。




注意点:プレートの3Dモデルは単純化してください

上記の手順の最後で述べましたが、プレートの3Dモデルが複雑な形状の場合はエラーで止まることが多いです。
金型の3Dモデルをそのまま使いたくなりますが、細かいねじ穴などは消しておいた方が無難ですね。
穴の縁の面取りも、消さなければならなかったことがあります。

また、複雑な形状だとメッシュも細かくする必要があると思いますので、計算時間とのバランスもお考えになってください。

以上、参考になればうれしいです。
無料なのに、なかなか使えます。FreeCAD。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。


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